夕方シゴト帰りにぼけっと信号待ちで立っていた。
風がそよそよ、もう薄暗い。かなりぼんやり。
大通りをはさんだ向こう側に観光客風のおとなしそうな男子。
ガイドブックを見ながらバッグからなんか出そうとしてる。
と思ったら、バッグからお財布らしきものがぽったーんと落下。
お財布がバッグからすべり落ちる瞬間なんて初めて見た。
映画のワンシーンを垣間見たような感じ。
誰も気づいてないみたい。彼のまわりの人も。こっち側で信号待ってる人も。
私だけ？今の見たの？
しかしショックを得て、おつかれモードから我に帰った。
信号が変わってみんなが道路を渡り始めたけれど、やっぱり誰も気がついてない。
もちろん落とした本人も。こりゃいかん。
つかつかつか。
ちょっと、君、なんか落としたよ。
突然話しかけられて不審顔の彼も、言われて振り返って落っこちてる自分のお財布にびっくり。
めでたしめでたし。
落し物なんかしたら、旅行がだいなしだもんね。
「ありがとうございました」
いいのいいのーなあんて感じで立ち去ろうとしたら、再び大きな声で、
「ありがとーございましたーーー」
振り返ってみたら、深々とおじぎしてるではありませんか。
礼儀正しい人だったのね。よい旅行になりますように。
それにしても、あれ見たのほんとに私だけだったの？ふしぎ。
